(2020/4/17 05:00)
東は日本海、西は地中海をうかがうまで版図を広げたモンゴル帝国が傾いた理由はいくつかあるが、もっとも大きいのが北半球をおおった大天災だという。「地震・洪水、長期にわたる異常気象、そして当然の飢餓と疫病、社会の流動化―。黒死病は、その最後にやってきた悪魔の群れのひとりに過ぎなかった」(『世界の歴史9 大モンゴルの時代』中公文庫)。
黒死病(ペスト)は1348年に全ヨーロッパで流行し人口の3分の1を奪った事で知られるが、中東や北アフリカにも甚大な被害をもたらした。繁栄の極みにあったモンゴル帝国も、うち続く天災と飢餓、疫病に対してなすすべがなかった。
異常気象と疫病―。6世紀以上前の厳然たる史実を前に、新型コロナウイルス感染拡大と戦う現代人は、不幸な一致を読み取ってしまう。
真夏の記録的な高温や豪雨、巨大台風など最近に起こった現象は記憶に新しいが、海外でも熱波や寒波などの異常気象が頻発している。
もちろん新型コロナの発生と異常気象に因果関係があるかはまったく不明だ。ただ、第二次世界大戦以後に人類が迎える最大の危機を前に、先人の経験や知恵をどう生かすか。今ほど問われている時はないかもしれない。
(2020/4/17 05:00)