(2020/4/21 05:00)
政府は国連に提出した温室効果ガス排出削減の数値目標を据え置いた。今後も産業界の意見を聞き、日本が正当な評価を受けられるように地球温暖化対策を進めてほしい。
環境NGOなどが主導する国際的な活動「サイエンス・ベースド・ターゲッツ(SBT)」は、企業の排出削減目標の“厳しさ”を認定している。産業革命前からの気温上昇を1・5度C未満に抑える難易度の高い目標として認められたのは世界で100社超、そのうち日本企業はリコーなど8社にとどまる。
持続的な成長力を備えた企業を評価するESG(環境・社会・企業統治)投資を支持する金融機関が増え、SBTが“環境情報”として重視されている。海外企業よりも目標のレベルで見劣りすると、日本企業は適切に評価されない。
国が高い目標を掲げると、企業も厳しい目標を策定しやすいはずだ。しかし政府は、2030年度までに温室効果ガス排出量を13年度比26%削減する数値を変えなかった。一方で「削減努力を追求する」などの言葉を加えて国連に提出した。
日本が新たな目標を示さなかったのは、エネルギー供給における電源構成(エネルギーミックス)が、低炭素になっていないことが大きい。再生可能エネルギーの比率を最大限高め、原子力発電も再稼働を進めて一定の比率確保が必要だ。
脱炭素の加速には、革新的な技術開発も欠かせないが、政府の方針が不明確なままでは、企業は思い切った投資に踏み切れない。
高い目標の設定には、環境省だけでなく、経済産業省など政府全体で、政策を総動員して取り組む姿勢を示す必要がある。目標を据え置きのまま提出したのは、省庁間の連携が不足していた結果とも言える。
2020年の気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)は、新型コロナウイルスの感染拡大で延期となった。政府は猶予期間を利用して、改めて議論を加速してもらいたい。コロナ感染が収束しても、気候変動は続くことを忘れてはならない。
(2020/4/21 05:00)
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