(2020/4/23 05:00)
国民1人当たり一律10万円を給付する「特別定額給付金(仮称)」事業で、給付作業を担う市町村は、予算の再編成やばく大な事務負担を迫られる。行政のデジタル化に遅れる日本では、早期支給に相当な困難が待ち構えている。
政府は10万円給付の申請方法案をまとめた。市町村を窓口とし、27日時点の住民基本台帳に記録された世帯ごとに給付する。給付を受けるには手書きの申請書類を郵送するか、マイナンバーカード(マイナカード)の保有者はオンラインで申請できる。特段の理由がある人には、窓口でも受け付ける。
マイナカードの普及率は15・5%しかないため、大半は郵送になる。市町村は手書きされた情報を、チェックした上で光学式文字読み取り装置(OCR)や手入力でデータ化しなければならない。データ化した情報をもとに市町村の指定金融機関経由で、各世帯の口座に振り込むまでが一連の作業だ。
政府は早ければ5月中に支給を始められるというが、市町村が抱える事務作業を考えれば、可能な自治体は相当限られるはずだ。収入激減世帯にとっては死活問題となりかねない。
せっかくの支援策も早期給付が困難なのは、日本のデジタル化、情報管理への対応が遅れているためだ。まずマイナカードが100%国民に普及していれば、事務作業は格段に軽減されただろう。
野村総合研究所の竹端克利上級研究員は「マイナカードを活用して現金給付をポイントとして送る仕組みがあればもっと迅速にできる」と指摘する。ただ現状ではマイナカードは税と社会保障に限定されているため、ポイント送付という新たな活用には法改正が必要になる。
日本は個人情報保護への過剰な配慮から、さまざまな電子情報が目的ごとに閉じた形で管理されている。国民一人ひとりが持つマイナンバーの利用にはさらに厳しい制限がある。諸外国の迅速な給付を見るにつけ、情報化に大きく遅れる日本の制度の不合理さが改めて浮き彫りになっている。
(2020/4/23 05:00)
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