(2020/5/4 05:00)
「春眠、暁(あかつき)を覚えず」の起句で知られる漢詩『春暁』。盛唐の孟浩然の作で、五言絶句の中では最も親しまれているもののひとつだ。
春の花といえば日本では何よりもサクラだが、中国ではそれに限らない。前夜の強い風と雨で、花はどれくらい散っただろうか―という『春暁』の詩想は、盛りが過ぎて落花を迎える季節。晩春の今頃である。
一日を通じて過ごしやすく、天気も安定する行楽シーズン。外出自粛は辛い。しかし医療関係者や物流、スーパー、ライフラインの関係者ら、働かなければならない人たちに「外出」の機会を譲り、社会的距離を置くことを心がけたい。
自衛隊では「休むことも任務」なのだそうだ。作戦を持続するには隊員の役割分担が必要ということだ。コロナウイルスとの闘いでは、社会を守る役割を国民すべてが負っている。
『春暁』の作者は布団から出ないまま鳥の啼(な)く声で寝覚め、前夜に風雨の音が大きかったことを思い出す。そして窓を開けることもなく表の花の心配をする。ずいぶんとズボラな生活態度だが、ステイホーム生活が推奨される今の時勢にはぴったり。書棚から詩書を出し、珠玉の名句で心を清めるのも大型連休の過ごし方のひとつだ。
(2020/5/4 05:00)