(2020/5/5 05:00)
行政と国民の距離を縮めるためにも、マイナンバーを核としたICTの利用拡大に真剣に取り組む必要がある。
新型コロナウイルスによる感染症拡大で、行政の不手際に対する国民の不満が高まっている。中でも収入を失った非正規労働者や、売り上げが激減した零細事業者などへの支援の遅れが問題視されている。
残念なのは、公的支援を迅速に届けるためのツールが行政側に整備されていないことだ。自治体の住民基本台帳の電子化が完了して久しい。しかし金融機関の口座番号やメールアドレスは連携していない。だから国民一律の給付金であっても、世帯ごとに郵送で口座番号を確認しなければならない。
政府は2015年に、住民基本台帳をベースとして全国民にマイナンバーを付与した。同時に個人情報保護に配慮するために、マイナンバーの利用方法を法律で限定するという強い制約を課した。
結果的にマイナンバーというICTツールの利便性の多くが封じられてしまったことは否定しがたい。例えば自治体が持つ住民税情報は各世帯の経済状態の把握に有効だが、これをマイナンバーと連動させて公的支援に使うには法改正が必要だ。
ICTツールは経済的困窮だけでなく、防疫にも極めて有効なことが明らかになっている。近隣国・地域の例を見ると、韓国は患者の行動履歴を全地球測位システム(GPS)で追尾し、感染ルートをあぶり出している。日本は聞き取りが頼りだ。
台湾は住民の病歴管理ばかりでなく、日本のマイナンバーカードに相当する健康保険カードを薬局に提示することで公平にマスクを販売する仕組みを導入した。日本の場合、薬局にはカードリーダーすらなく“周回遅れ”の感が漂う。
仮に技術的に可能であっても、国民がマイナンバーに懐疑的で政府と距離を置いているようでは、スピード感のある支援は期待しがたい。今回の事態には間に合わないとしても、マイナンバーの利用拡大が必須であることを改めて認識したい。
(2020/5/5 05:00)
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