(2020/5/8 05:00)
新型コロナウイルスの影響が土地や建物の価格下落を招くことは避けられない。実需をベースとして備えを固めたい。
3月18日に国土交通省が発表した公示地価は「5年連続で上昇し、上昇基調を強めている」という判断だった。不動産業界はこれを歓迎する一方、この時点で顕在化していたコロナの対策として「内需の柱である住宅投資を活性化し、住宅市場を安定的に推移させる施策」(菰田正信不動産協会理事長=三井不動産社長)などを求めた。
ただ、その後のコロナショックは予想を大きく上回り、すでに民間調査で不動産価格の下落傾向が明らかになっている。投資用物件については「新築は4月以降、動きが止まり、販売業者は値引きに動いている。中古物件も激減した」(銀行系不動産販売会社)という。
安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」は株価と都市部の不動産価格の上昇に大きく寄与した。一等地のタワーマンションの高層階では、数年間で倍以上の高値で転売された例もあるという。
転売で利益が出る特異な経済環境にひかれて内外の個人投資家らが新規参入。中小金融機関の有力な融資先となってきた。こうした投資家や金融機関は、不動産価格下落で苦境に陥る恐れがある。
構図としては平成初期のバブル経済崩壊と同じだ。ただ不動産価格上昇がバブルほど過大ではなかった分、マイナスの規模もバブルほどにはならないとみる関係者が多い。
コロナショックが長引くことで所得が低迷すれば、自宅の購入や賃借に振り向けられる額は減少する。これまで都市部の住宅投資をリードしてきた単身世帯向けの集合住宅は伸び悩むだろう。また、売り上げが激減している飲食業などの業容縮小によって、店舗などの価格・賃料も見直しを迫られよう。
不動産は投資金額が大きいだけに、低迷による経済への波及効果も大きい。未来は予見しがたいが、打撃を最小化するには、それぞれの立場で実需に根ざした取引に徹することだ。
(2020/5/8 05:00)
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