(2020/5/12 05:00)
新型コロナウイルス感染者の減少傾向を受けて経済活動を再開する国が出てきた。おろそかにできないのは地球温暖化問題への対応だ。「経済と環境の好循環」を実現するため温暖化対策に弾みをつけたい。
国際エネルギー機関(IEA)によると、コロナ禍による経済停滞で化石燃料消費が減少するため、2020年のエネルギー関連の二酸化炭素(CO2)排出量は前年比約8%減少の306億トンで、減少量は過去最大規模になると推計する。特に石炭は第2次世界大戦以降で最大の下げ幅になる見込み。
懸念されるのはコロナ収束後の経済回復局面で顕在化するCO2排出量のリバウンドだ。リーマン・ショック後にはCO2排出量が急増した。最近の原油価格の急落も、化石燃料消費拡大の懸念材料だ。温暖化対策は「ひとまず棚上げ」との流れが強まれば、将来に禍根を残すことになりかねない。
CO2排出量の大幅減は、中国やインドなどの化石燃料大量使用国が強力な都市封鎖を実施したことが大きい。中国が経済活動を再開させており、再び化石燃料消費は拡大傾向にある。
温暖化の影響は、猛暑や台風、豪雨災害、干ばつなどにとどまらず、熱帯・亜熱帯地域の感染症が温帯地域に広がるリスクを高める。温暖化が新たな感染症の拡大を助長し、経済停滞を繰り返す危険性もある。
今年はパリ協定の実施初年にあたる。11月に予定されていた第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)は来年に延期される。議長国の英国は各国に対してNDC(国が決定する貢献)の引き上げを強く働きかけようとしていたが、コロナ禍で経済危機に直面するなかで、国際世論の形成は厳しい道のりが予想される。
IEAはエネルギー消費が減少する中でも、再生可能エネルギーは比較的安定した供給を実現しているとする。コロナ収束後の世界で、脱炭素を推進するには、再生可能エネ電源の一層の低コスト化が必要だ。日本も開発を加速させ、世界の低炭素化へ貢献してもらいたい。
(2020/5/12 05:00)
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