(2020/5/13 05:00)
「なぜ、鏡屋が箸ゲームなのかが分かっていただけると思う」。こんな手紙を添えて、コミー(埼玉県川口市)社長の小宮山栄さんから著書『箸のはなしを聞いてくれ』が届いた。
手はモノづくりの基本であり、技術屋には手先の器用さ、巧みな箸づかいが求められると説く。小宮山さん自ら箸を使ったゲームを考案。高齢者や子どもたちに、楽しみながら箸の効用を伝える活動にも取り組んでいる。
圧巻は、自動車メーカーの生産システムに根付くムダ取りの哲学と、箸を使う食事に関する考察だ。食べ物を切る・ちぎるは「加工」、つかむ・刺す・寄せるは「積み込み」、口に入れるは「運搬」と、箸の機能をモノづくり工程として分類。洋食ならフォーク、ナイフ、スプーンが必要だが、箸はたった2本で、持ち替える手間もいらないと利点を示す。
小宮山さんは箸文化こそ、国土が狭く、資源も少ない日本の国民性や技の神髄に通じると確信。「モノづくりで生きる国を将来支える技術者・職人を育てるため、一層努力して箸の道を究めたい」と決意する。
同社は新型コロナウイルス対策で、従業員の半数が在宅で勤務中だ。朝礼代わりのゲーム「箸技(はしわざ)」はオンライン会議で続けている。
(2020/5/13 05:00)