産業春秋/宇宙開発の精華

(2020/6/2 05:00)

米国の宇宙船『クルードラゴン』が2人の宇宙飛行士を乗せた試験飛行で、無事に国際宇宙ステーションに到着した。民間による有人宇宙船は世界初。宇宙ビジネスの大きな一歩だ。

米国のニュースとはいえ日本も無関係ではない。今後の乗員輸送には野口聡一宇宙飛行士が搭乗予定で、日本にも安全確認の責任がある。従来のロシアの宇宙船に比べて「情報が得やすくなった」と宇宙航空研究開発機構の担当者。

技術進歩は心強いが、日本側には複雑な思いもある。新型宇宙船を打ち上げた米スペースXの『ファルコン9』ロケットは、こなれた技術で小型エンジンを開発。これを9基並列運用するクラスター技術と、再利用する技術によって圧倒的な低価格化を目指している。

日本は宇宙ステーション補給機『こうのとり』などで実績を積む一方、最先端技術を投入した新型ロケット『H3』を今年度中に打ち上げる計画。性能はファルコンを上回るが、使い捨てのため価格面では米国と差がつく。「国力の差とは言いたくないんですが…」と開発担当者は口ごもる。

宇宙開発は一国の技術力の精華。短期間で追いつくことは出来ない。民間の力も活用し、切磋琢磨(せっさたくま)して遠い宇宙を近づけてもらいたい。

(2020/6/2 05:00)

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