(2020/6/12 05:00)
日立製作所社長・会長だった庄山悦彦さんが亡くなられた。本業に苦戦し、財界活動は目立たなかったと評する人が多いかも知れない。
経団連の奥田碩会長(トヨタ自動車会長=当時)の後継選びが本格化した2005年夏ごろ、財界の長老に話をお聞きした。「奥田さんが来られてね。次は御手洗さん(冨士夫氏=キヤノン会長)か、庄山さんのどちらかにしたいと相談されたよ」。
日立の経営は一時より立ち直ったものの、盤石とは思えない時期だった。仮に経団連会長の打診があっても「今は無理だろう」と同業他社のトップは分析していた。日立が7000億円超という空前の当期赤字に沈んだのは少し後のことだ。
周知のように、奥田さんは後継会長に御手洗さんを指名した。ただ「人格・識見」が問われる財界トップに、庄山さんの名が上がっていたことを記しておきたい。現在の経団連会長の中西宏明さんの前にも、日立出身はありえたのだ。
各種会議の進行役や自社のCMへの出演。伝統企業のトップとしては異例なほど頼まれごとに気軽に応えていた庄山さん。「僕は学部卒だけど、博士や修士を大事にしないと…」と技術者重視を熱く語った庄山さん。どうか安らかにお休み下さい。
(2020/6/12 05:00)