(2020/6/12 05:00)
サプライチェーンの再構築が叫ばれている。国内回帰、現地化、多重化などさまざまな対策から、柔軟で強靱(きょうじん)な解を見いだしていきたい。
新型コロナウイルス感染症による都市封鎖や生産活動の停滞で、必要な部材や製品が届かない事態が頻発した。低コストのみを追求し、過度な生産集中や調達依存状態に陥っていた。
今後の見直しで考えるべきは、国内で必要不可欠な資材・製品の調達網と、世界市場を視野に入れた事業展開における調達・供給網の二つの視点だ。
今回、マスクや防護衣、人工呼吸器、医薬品の原材料など、命に関わる製品の多くを中国など海外に頼っていたことが分かった。世界貿易機関(WTO)によると、これら医療関連製品の輸出禁止・制限措置をとった国が80カ国・地域に及んだ。
調達網途絶のリスクに備え、一定量の備蓄や、緊急時には国内生産を大幅に増強できる仕組みを整えるべきだ。今回のコロナ禍で、クリーンルームを持つ多くの企業が、マスクや防護衣生産に協力した。平時のうちに企業間連携の仕組みを設け、より効率的な増産態勢が構築できるようにしたい。
自動車や電機、機械など、世界市場で事業を行う産業は、調達や生産体制の見直しを再検討する必要がある。調達国の多重化や同じ製品を複数拠点で生産する、重要部品・部材の在庫積み増しなど、今後起こりうる危機に柔軟に対応する仕組み作りを早急にまとめたい。
IoT(モノのインターネット)や3Dプリンターなど、デジタル技術を駆使した遠隔・無人化など、柔軟な生産に寄与する新技術も積極的に導入すべきだ。過度な一極化の弊害は排しながらも、需要の見込める地域で調達から生産、販売までを完結する現地化も必要だろう。
コロナ禍でグローバル経済を否定する意見もあるが、日本は世界市場を視野に活動しなければ、縮小均衡に陥るだけだ。間もなく海外との往来も順次再開する。コロナ後のサプライチェーンの最適解を真剣に考え、実行してもらいたい。
(2020/6/12 05:00)
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