(2020/7/16 05:00)
新型コロナウイルス感染拡大による企業業績の悪化で、イノベーションの停滞が懸念される。企業は守勢に回るだけでなく、コロナ禍をイノベーション加速のための機会と捉え、攻めの投資を貫くべきだ。
政府は「統合イノベーション戦略2020」を近く閣議決定する。コロナ感染対策で取り組みの遅れがあらわになった、デジタル化・リモート化への対応が焦点だ。教育、研究、公共事業、物流など、あらゆる分野でデジタル・リモート化に向けた基盤整備を進める。
その推進力として期待されるのが、オープンイノベーションだ。大企業がベンチャーや中小企業の技術やアイデアを組み合わせ、革新的なビジネスモデルや製品、サービスを共創する。政府はオープンイノベーション促進税制を創設し、投資を後押しする。
ただコロナ禍で、大企業のスタートアップ企業への投資に急ブレーキがかかることが懸念されている。デロイトトーマツベンチャーサポートの調査によると、大企業系投資会社の約9割が、20年のスタートアップ企業などへの投資を19年より減らす見込みと回答している。
オープンイノベーションの実施率は、欧米企業の78%に対して日本企業は47%に留まっている(「日米欧企業におけるオープンイノベーション活動の比較研究」学習院大学経済論集)。
ここ数年、日本でも大企業によるオープンイノベーションはブームの様相を呈していたが、起業支援の専門家は「成果より投資そのものが目的化しているケースも少なくない」と内容の乏しさを指摘する。
資金繰りに苦しむベンチャーが増えている今こそ、有望な投資先をみつける好機だ。リモートワーク関連や遠隔医療、配送ロボットなど、人と人との接触を減らす分野のビジネスチャンスが拡大している。コロナ収束後は、人手不足解消や働き方改革にも資する領域での新規事業は、息の長い需要が見込める。逆境の時こそ、オープンイノベーションを事業創出の有効手段と位置づけたい。
(2020/7/16 05:00)
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