(2020/7/21 05:00)
今年はシラスウナギが豊漁と聞く。少しは懐に優しいうな重にありつけるのではと期待していたら、時期尚早らしい。
日本養鰻漁業協同組合連合会(静岡市)は、豊漁で本格的に安値が期待できるのは秋頃からとみる。きょうの土用の丑(うし)の日に出回るウナギの多くは豊漁前に捕れた稚魚を育てたものという。
歌人で医師の斎藤茂吉は、かば焼きが大好物だった。斎藤茂吉記念館(山形県上山市)によると、茂吉は長男茂太の婚約者と顔合わせの会食をした時、婚約者が緊張してうな重に箸を付けられないでいると、取り上げて食べてしまったという逸話がある。
和食を代表する食材でありながら生態は謎に包まれている。産卵場が西マリアナ海嶺南端部と判明したのは今世紀のこと。なぜ日本列島から2500キロメートルも回遊するのか、どんなルートで産卵場に来るかは未解明のままだ。
茂吉の日記には「ドウシテモ歌ガ出来ナイ。(略)うなぎノ午食ヲナシ、一気呵成(かせい)ニ歌十首ヲ纏(まと)ム」とある。好物どころか、ウナギの神秘的な力を信じていたらしい。今年の豊漁も理由が分からず神秘性をかき立てる。ウナギパワーを頼みにしたくなるほど、健康のありがたみが身に染みる夏だ。
(2020/7/21 05:00)