(2020/7/27 05:00)
工作機械業界は繁閑の激しい業界である。受注が減少している今だからこそ、デジタル化など未来の成長に資する取り組みに向き合ってもらいたい。
日本工作機械工業会によると、1―6月の工作機械受注実績は、前年同期比39・9%減の4100億円だった。5000億円を割り込むのは10年ぶり。新型コロナウイルス感染症による世界経済の停滞で、自動車をはじめ、航空機・造船・輸送用機械向けが軒並み落ち込んだ。
飯村幸生日工会会長(芝浦機械会長)は、「コロナ以外でも、米中対立の激化などで先行きへの不安が増大していることが影響している」と指摘する。
工作機械業界はもともと受注変動が激しい業界である。リーマン・ショックに見舞われた2009年1―6月は過去最悪の1481億円だった一方、景気拡大が続いた18年同期は9640億円と過去最高だった。6倍以上も変動する業界は珍しい。
中国の受注が回復傾向にあるなど、足元に光明も見え始めたが、世界のコロナ感染は依然拡大中で、当面V字回復は期待できない。しかし、収束後に大きな成長機会が訪れることも、過去の例を見て明らかだ。
今取り組むべきは、未来の成長への準備だ。デジタル化に加え、コロナ禍で顕在化したリモート化やサプライチェーンの再構築に目を向けてもらいたい。
DMG森精機は、自社の展示施設をコンピューターグラフィックス(CG)で再現した「デジタルツインショールーム」を開設した。海外など遠隔からでも、実際の設備や加工イメージをくまなく見ることができる。オークマもウェブによる展示会やセミナーを開催し、顧客との接点をより強固にする。
アフターコロナは、商談のあり方も大きく変わる可能性がある。大型展示会に出展して顧客を集めるという従来型のスタイルに加え、デジタル・リモート技術を駆使した、いつでもどこでも顧客とつながれる環境づくりも必要だ。
厳しい経営環境下でも、新たな挑戦に踏み込むことが、次の大きな成長を呼ぶカギとなる。
(2020/7/27 05:00)