(2020/7/27 05:00)
桶川飛行学校平和祈念館(埼玉県桶川市)が8月4日に開館する。熊谷陸軍飛行学校の分教場として1937年(昭12)に開校。第二次世界大戦末期には特別攻撃隊の養成施設になり、訓練を終えた航空兵は鹿児島県の知覧基地から出撃した。
分教場で教官を務めた伍井(いつい)芳夫氏は、特攻隊長として沖縄戦で戦死した。夫人に宛てた最後の手紙は「後をしっかり頼む。子供を丈夫に育ててくれ。大いに頑張ってくれ。体に注意せよ。皆に宜しく」。
ひとむかし前まで戦争の語り部は身近にいた。祖父は「自分がいた部隊は戦闘ではなくマラリアでばたばた逝きおった」「戦争ほど愚かなものはない」が口癖だった。
令和の時代を生きる若者に、戦争の悲惨さや不条理を体験談として語り継ぐ人はもうじきいなくなる。戦争は記憶から消え、記録しか残らなくなる。それでも真実は伝えていかねばならない。
祈念館は桶川市民の熱意が実り、市営住宅などに転用していた建物を当時のままに復元した。深い木立に包まれた兵舎棟からは、今にも点呼の声が響いてきそうな厳粛さがある。コロナ禍で戦没者の慰霊行事が相次ぎ中止や縮小になっている。平和の尊さに思いをはせたい。
(2020/7/27 05:00)