(2020/8/7 05:00)
日本の近代化を支え、戦後の復興から経済成長へと導いたモノづくりの系譜を継承していく上で、「機械遺産」がもたらす意義は大きい。
日本機械学会が選考する機械遺産の認定が、2020年度に100件を超えた。機械遺産は、歴史に残る機械技術関連遺産を大切に保存し、文化的遺産として次世代に伝えることを目的に、07年に創設された。
認定第1号は「小菅修船場跡の曳揚げ装置」(長崎市小菅町)。幕末に築造された現存最初期の造船設備で、薩摩藩と英国人貿易商トーマス・グラバーらが共同出資で完成させた。日本の造船業発展の礎ともなったもので、現在は三菱重工業の長崎造船所が所有している。
今回100件目に認定されたのは、「工部大学校の『機械学』教育機器」。東京大学工学部の前身の一つである工部大学校で、明治初期に工学教育に用いられた製図器具や機械模型、海外から招聘(しょうへい)した教授の講義ノートや学生の成績表など。海外の新しい技術導入にまい進する姿を垣間見ることができる資料で、現在は東大が保存している。
過去の認定を見ると、「池貝工場製第1号旋盤」、「新聞博物館の活字鋳造機」、「多能式自動券売機」、「東海道新幹線0系電動客車」、「ウォシュレットG(温水洗浄便座)」など、海外からの導入や模倣から始まった技術が国産化され、世界初の独自技術へと進化する過程が見て取れる。
日本は世界大戦や石油ショック、円高、震災など数多くの危機を乗り越えてきた。そして今、新型コロナウイルス感染症で、世界の製造業は大きな痛手を受けている。三菱重工長崎造船所も売却交渉が進められるなど、産業構造の激変は避けられない事態だ。
先の見えない状況ではあるが、製造業に必要なのは、変化に対応する力であり、それを進めるための人材育成である。
きょうは機械学会が制定した「機械の日」。機械遺産で示された先人たちの努力の歴史を読み解き、未来への変革の礎としたい。
(2020/8/7 05:00)
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