(2020/8/20 05:00)
新型コロナウイルス感染症の収束が見通せず、治療薬の創製に挑む製薬会社への期待は、かつてなく大きい。しかし、新薬開発の難易度は高い。事業環境が厳しい中でも研究開発費を増額する新薬メーカーが多いのは心強いが、新たな創薬手法への挑戦の継続が求められる。
新薬開発はどのような疾患領域でも困難を伴う。日本製薬工業協会によると、2012―16年度の間、基礎研究段階で合成された化合物が最終的に承認へ至る確率は2万5956分の1だった。製薬企業が自社の研究部門内で化合物の創製を試みるだけでは、新薬として結実する可能性は極めて低いと言える。
そこで注目されるのが、既存薬の有効成分を転用する「ドラッグリポジショニング」だ。例えばリウマチ治療薬「アクテムラ」は、新型コロナ薬としての開発が進行中。別の適応症で承認済みの既存薬は、安全性の面では新規の物質よりも優位と考えられる点からも期待できる。
製薬会社は“自前主義”からの転換を一段と進めることも必要だ。近年、大手企業を中心に、数十万種類の化合物群を相互に交換・利用する試みが行われている。また、ロボットの一種を活用して新薬候補物質を探索する業務を請け負う事業者も出てきた。特に、経営資源の限られる中小の製薬会社は、外部の機関と積極的に連携して生産性向上を図ることが望ましい。
こうした施策の重要性は新型コロナ以外の疾患の治療薬の創製でも増すと考えられ、製薬企業には、創薬の過程を見直す観点も含めて積極的な研究開発活動が期待される。
日刊工業新聞社が実施した研究開発アンケート(有効回答238社)によると、20年度の研究開発費上位10社のうち、アステラス製薬、第一三共など4社が新薬メーカーで占められた。4社いずれも前年度比で増額する計画であり、挑戦意欲はたたえられていい。
医療機関では新型コロナの影響で、他の病気の患者に十分な治療を施せない事例もある。治療成績改善に貢献する新薬が多く出てくることを期待したい。
(2020/8/20 05:00)
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