(2020/8/26 05:00)
事業の選択と集中を断行し、成長領域に投資を集中して、生産性を向上させる。新型コロナウイルス感染症で経済環境が激変する時だからこそ、取り組みを加速すべきだ。
武田薬品工業は「アリナミン」などで知られる一般医薬品事業を手がける子会社、武田コンシューマーヘルスケアを、米大手ファンドのブラックストーン・グループに約2420億円で売却する。相対的に利益率が低い一般医薬品事業をやめ、消化器系疾患やがんなど収益性が高い医療用医薬品の研究開発に投資を集中させる。日本の消費者に親しまれたブランドを手放すことに、社内で議論もあっただろう。
日本の大企業の利益率が低い背景に、事業の多角化が有効に機能しないコングロマリットディスカウント問題があると言われる。縦割り組織が成長分野に投資を集中させられず、大きな成長機会を逃す結果となっている。独シーメンスは自社の事業領域を大胆に組み替え、投資家から評価されている。
日本でも事業の組み替えに乗り出す企業はある。日立製作所はハードディスク駆動装置事業や子会社の日立工機、日立化成を売却し、一方でスイスABBの送配電ネットワーク事業を買収した。昭和電工は4月に日立化成を買収したのに続き、2000億円規模の非中核事業の売却方針を表明した。
コロナ禍で世界の経済情勢は激変した。多くの企業で事業領域の再検討が求められている。黒字事業であっても、より価値を高めてくれる他社に譲渡する。祖業だから、従業員が不安がるからなどで、従来なら躊躇(ちゅうちょ)することに踏み出すことも必要だろう。
観光や外食など、コロナ禍で苦境に立つ事業はなおのこと、経営判断が重要になる。社外取締役を含めた取締役会の役割が問われている。
政府は自社株式を対価とした買収に応じた株主が株式譲渡損益の繰り延べ措置をやりやすくするなど、税制を見直し、企業の事業再編の後押しをしてもらいたい。
(2020/8/26 05:00)
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