(2020/9/1 05:00)
「まるでキャバレーのようだ、と言った人もいた。しかし、自分の会社へ取り入れた社長も出るほどであった」。精密プレス機メーカー、能率機械製作所(千葉県浦安市)が1938年の創業時に採用した従業員固有番号制は、画期的だった。
同社の80周年記念誌には、「ここで働く者は全て平等」とある。上下関係の弊害をなくしたかった創業者、大木重吉さんの思いがうかがえる。フレデリック・テイラーに生産の能率を学び、平等がその原点と説いた。
大木さんは自らに、人が好まない4番を割り振った。小事にこだわらない兄は1番、右腕として支えてくれた若手は2番、耳の痛いことも言える妹は3番。互いに親しく呼び合った。
同じ番号制でも、国民を12ケタで識別するマイナンバーはどうもよそよそしい。税や社会保障、災害時を想定したというが、活用の利点が腑(ふ)に落ちない人も多いはず。マイナンバーカードの所持は全国民の2割弱にとどまる。
カード普及と消費喚起のため、政府はきょう「マイナポイント」を始める。カードのIDとキャッシュレス決済をひも付け、チャージ・購入額の25%を戻す。目先のお得感も大事だが、所持の大義をきちんと確認したい。
(2020/9/1 05:00)