(2020/9/18 05:00)
経済が苦しい局面だからこそ、デジタル化推進など将来につながる税制を議論すべきだ。
2021年度税制改正の議論が、年末に向けて動きだした。産業界では、まず包括的な意見を経団連が政府・与党に提言し、その後に業界団体などが個別の要望をまとめる。今年の経団連の提言は、デジタル変革(DX)と新型コロナウイルス感染症で急激に悪化する企業業績対策に重点を置いた。
DXの柱となるのは研究開発税制の延長・拡充だ。コロナによって企業収益が圧迫される中で、将来に向けた投資の縮小が懸念される。税制面の恩典を拡大し、企業の研究開発意欲を後押しするのは大いに意味のあることだ。経団連は同時に、従来の機器・ソフト投資だけでなく、クラウド型サービスの研究開発についても対象に加えるよう要望した。
さらにサイバーセキュリティーやロボティクス、フィンテックなど多面的なDX投資への減税や、書面・押印原則の見直しなど税務手続きのデジタル化・簡素化を重点要望に掲げた。従来の投資減税メニューを超えた項目は、DX加速への産業界の意志を表すものと言える。
官民それぞれが古い業務フローを見直し、不合理をなくすことが経済を底上げする。菅義偉首相の掲げるデジタル化に通ずるものであり、各府省において具体策を検討してほしい。
一方、コロナ対策としての税制要望は、欠損金の上限緩和と、固定資産税の評価据え置きである。コロナ禍によって運輸、観光、外食産業などが巨額の赤字に落ち込む。現行の税制では、大企業はこの欠損金の一部しか翌年度以降に繰り越せない。中小企業並みに繰り越し上限を拡充すべきだ。
また21年度に予定される固定資産税の評価替えは、近年の地価上昇を反映して増税になる見込み。これは大企業ばかりでなく駅前など地価の高い商業地でコロナ禍に苦しむ中小・零細事業者を圧迫する。政府・与党は、こうした産業界の切実な悩みにしっかり応えて税制改正に取り組んでもらいたい。
(2020/9/18 05:00)