(2020/9/24 05:00)
菅義偉新政権が行政改革の目玉に据える「デジタル庁」。各省庁は受け身にならず、業務のムダとりなどを自ら推し進める意欲を持ち、現場起点で改革に挑んでもらいたい。
政府は23日、菅首相と全閣僚による「デジタル改革関係閣僚会議」の初会合を開いた。デジタル庁創設に向け、年内に基本方針を定め、次期通常国会に関連法案を提出、2021年中の設立を目指す。IT基本法も抜本改正し、民間から人材登用を進めるなど、スピード重視で改革を急ぐ構えだ。
行政サービスのデジタル化の遅れはコロナ禍で浮き彫りとなった。各省はデジタル庁の設立を待つことなく、現場起点でなすべき手だてやデジタル化推進の加速を考えてもらいたい。
デジタル化の遅れや行政の縦割りへの警鐘は、いまに始まったことではない。第2次安倍晋三政権でも、発足まもなく「世界最先端のIT国家創造宣言」を掲げ、司令塔となる内閣情報通信政策監の権限を強化し、「政府CIO(最高情報責任者)」を民間から登用した。
09年には省庁ごとのIT予算に横串を通すために、「霞が関クラウド」が検討されたが、当時は構想に留まった。地方のIT活用促進も掲げられたが、大きな成果を実感できないまま、世界最先端IT国家の看板は色あせた。省庁のクラウド化は今年になってようやく実施が始まる。何が障壁だったのかを検証し、今後の教訓としたい。
IT活用やデジタル化を巡る議論は産業界においても、打ち上げ花火のように、最初は華々しいが、成果がよく分からずに尻すぼみになることが多い。
ここ1、2年はデジタル変革(DX)大合唱の中で、イノベーション創出やクラウド、人工知能(AI)などの横文字が飛び交うが、これらは“魔法の杖(つえ)”ではない。先進技術の導入が解決策ではなく、省庁の担当者一人ひとりが行動を変えることが改革への第一歩といえよう。
全体最適化に向けたトップダウンの施策と、現場起点でのボトムアップの取り組みが相乗効果を生むよう期待したい。
(2020/9/24 05:00)
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