(2020/9/25 05:00)
「税は国家なり」とは、出典不明の名言である。言葉の通り、税は短期的な率や額だけではなく、長期的に国民や企業のあり方を左右する制度として考える必要がある。
経団連は、先ごろまとめた税制改正に関する提言の終わり近くに「イノベーションを通じた脱炭素社会の実現に資する税制措置」を検討項目として盛り込んだ。ただ炭素税については「議論を始める段階にはない」とした。
産業界には環境税制への拒否感が強い。特定業界への過度な負担は社会の健全な発展を損なう。昨年までの提言は炭素税に「反対」と明記していた。それに比べると、今年は微妙な書きぶりながら議論を受け入れるスタンスに変化したと読み取れる。
関係者によれば、このきっかけは新型コロナウイルスだという。巨額の補正予算で国の財政赤字が一気に拡大した。しかし消費増税には菅義偉首相も与党も後ろ向き。だとすれば近い将来、財源として環境税制の議論が浮上することを排除できない。
この一事をもって、産業界全体が炭素税容認に動くとは考えられない。しかし合理的に負担が分散されれば、議論の土台にはなる。将来の国のあり方が、こんなところからも垣間見える。
(2020/9/25 05:00)