(2020/10/1 05:00)
働く人の心と体の安全を守るのは、経営者にとって責務である。新型コロナウイルス感染症で人の往来が減少するなかでも、重大な労働災害の発生件数は増加している。深刻に受け止め対策を講じていきたい。
1日から「全国労働衛生週間」が始まった。すべての働く人が安心で健康に働ける職場環境づくりを考える契機ととらえ、取り組む必要がある。
コロナ禍で働き方にも大きな変化が起こっている。過去着実に減少してきた死亡災害や休業4日以上の死傷災害が、2020年前半(1―6月)に、前年同期を上回った。増加が顕著なのが、小売店や宅配、物流などの交通事故だ。仕事を失った人が、不慣れな配達作業を担うケースも散見される。
同時に休業明けに機械設備などを作動させる際に、事故が発生するケースも見られる。確認作業を徹底したい。
在宅勤務やテレワークの導入が進み、1人で仕事をする機会が増えた。その中で、長時間労働や孤独によるストレスを抱える事例が増えている。7月以降、自殺者数が上昇傾向である背景には、仕事への不安が要因の一つ言われている。メンタルヘルス対策が急務だ。
中長期の課題となるのが、高齢労働者への対応だ。高年齢者雇用安定法の改正で、70歳までの就業機会確保が求められるようになった。19年の65―69歳の就業者数は428万人で、今後10年で大幅増が見込まれる。
厚生労働省は「エイジフレンドリーガイドライン」を策定し、高齢者の身体機能の低下に応じた、設備や装置の導入や作業内容の見直しなどを提示している。適切に活用したい。また、健康維持には、日頃の体力づくりも重要になる。労使が協力して、軽い運動やストレッチを促す機会を設けるなど、企業に応じた工夫を考えてもらいたい。
コロナ禍で多くの企業が厳しい経営的状況に直面している。しかし、ひとたび労働災害が発生すれば、経営へのリスクは甚大なものとなる。発生抑止への対応が、経営の安定につながると肝に銘じてもらいたい。
(2020/10/1 05:00)
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