社説/東証が終日取引停止 金融システムを脅かす事態だ

(2020/10/2 05:00)

東京証券取引所が1日、全銘柄の売買を停止した。システムトラブルによる終日停止は前代未聞。世界経済にも多大な影響を及ぼす事態である。徹底した原因究明と再発防止策を講じてもらいたい。

東証の1部、2部、マザーズ市場に上場する約3700銘柄の取引とともに、同じシステムを利用する札幌、名古屋、福岡の各証券取引所の取引も停止となった。システム障害による停止は、2005年など過去にも数時間発生した例はあるが、終日は今回が初である。

東証によると、株式売買システム「アローヘッド」の、株価情報を配信する部分のディスク装置に不具合が生じ、バックアップ措置も機能しなかった。

株式取引において最も重要なのは、機会の平等である。公平な情報提供が困難であれば、停止という判断もやむを得まい。午前中の時点で終日停止を判断したのも、市場を混乱させない措置と受け止めたい。

投資家にとって下期入りの初日として、さまざまな影響が及んだ。一部の投資家の注文が取り消され、新規上場を予定した3社の株式公開も延期された。新規の個人投資家が増加する市場環境に水を差す事態だ。

外国法人等の株式保有比率は29・6%。世界の株式市場における東証の位置付けは高い。世界の金融市場に、日本の金融システムの脆弱(ぜいじゃく)性をさらけ出す結果となったのも残念だ。

原因究明が何よりも重要だ。東証のアローヘッドは2019年11月にシステムを全面刷新し、「ネバーストップ」を掲げてきた。それが1年もたたないうちに、大きな問題を起こした。国際金融都市構想を掲げる日本の信用にも関わる事態である。システム構築を担当した富士通の責任も重大だ。

国を挙げてデジタル化対応に取り組むタイミングでの不祥事となった。システムは堅固と思っていても決して万全ではない。デジタル化がもたらすリスクを予見し、メリットを最大化するにはどう対処すべきなのか。日本に重い宿題を課した問題である。

(2020/10/2 05:00)

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