(2020/10/5 05:00)
ダチョウをつれた旅人が砂漠に踏み迷う。食料は分け合い、夜は添い寝する。だが旅人は食料が少なくなると独り占めする。それでも従順なダチョウは旅人を離れない。
ある晩、ダチョウが旅人の懐中時計を飲み込んでしまうと、旅人はダチョウの腿(もも)肉を食べ始める。揚げ句は体内に手を突っ込み、金目になる時計を奪い取ろうとする。ダチョウは激怒し旅人をついばみ骸骨にしてしまう。短編小説『駝鳥』(筒井康隆著)は人間の奥底にある浅ましさをブラックユーモアで描く。
実際にダチョウは多少のケガや病気で死ぬことは珍しく60年も生きる。その秘密は驚異的な免疫力と回復力にあるのでは―。京都府立大学の塚本康浩教授の探究心は、ダチョウの卵からウイルスを不活化する強力な抗体の発見につながる。
4月には学長に就任したが「ダチョウは爬虫(はちゅう)類に近いため、まだ進化できる。抗体も多様性に富む」とダチョウへの情熱は変わらない。科学技術振興機構(JST)の支援で確立した量産技術は、マスクや空調フィルターの高機能化に貢献しつつありコロナ禍でも脚光を浴びる。
餓鬼と化していく旅人はもしや自分かもしれぬ。旅人に成り代わりダチョウに詫びたい。
(2020/10/5 05:00)
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