(2020/10/5 05:00)
防災関連の技術、製品、サービスなどの性能を保証する「防災ISO(国際標準化)規格」の原案づくりが日本発で始まる。ISOを信用力に輸出を促進し、民間企業主導による技術革新の好循環を創出したい。
東北大学災害科学国際研究所(今村文彦所長)は、経済産業省や消防庁、仙台市などと準備委員会を設立し、ISOの原案作成を進める。2023年の発効を目指している。
想定する災害は、地震、津波、風水害、感染症、気候変動による火災、飢饉(ききん)など。基本原則を第1段階に、個別テーマとして、地震計、加速度計、緊急速報メール、備蓄食、ハザードマップ、避難所の運営方法、ライフラインの復旧方法、防災教育などハード・ソフト両面の原案を国際標準化機構に申請する。
防災分野は標準化の遅れが目立つ。ハザードマップは同じ自治体でも津波と洪水で浸水の深さを示す色が統一されていないケースもある。また災害時に自治体から送信される緊急速報メールは、日本語表示しかないものが多く国際化対応が不十分だ。避難所の感染防止対策も自治体により優劣がみられる。
技術革新ではセンサーやドローン、人工知能(AI)などを防災情報の収集や伝達に活用する「防災×IT」の取り組みを加速したい。仙台市は20年度から「BOSAI―TECHイノベーション創出促進事業」を通じて国内外の企業に誘致を呼びかけ、仙台を防災関連産業の集積地にする取り組みを始めた。ISOは最新技術の社会実装を促し、地方に産業創造の機会をもたらす効果が見込める。
課題は国や地域により、防災意識、自然災害の種類、経済力、教育水準などが異なる中で、どのように「共通項」を抽出し標準化できるかにある。このため準備委員会では「地産地防」を基本理念に、国や地域の特性に合った仕様に変更できるよう柔軟なISOにしたい考えだ。
自然災害の激甚化で、ハード対策だけでは対応できなくなっている。ISO策定が避難方法などのソフト対策を含めた総合防災力向上の一助となる。
(2020/10/5 05:00)