(2020/10/9 05:00)
新たな働き方や旅行のスタイルとして「ワーケーション」が注目を集める。ただ、テレワークの環境さえ整わない企業が多い中で観光需要の喚起策として即効性は期待できそうにない。絵に描いた餅にならないよう、息の長い支援が求められる。
ワーケーションはwork(仕事)とvacation(休暇)を組み合わせた造語。米国で生まれ、観光地などで休暇を楽しみながらテレワークする。
オフィスと異なる環境でリフレッシュして仕事のモチベーションを高めたり、地域や他企業との交流で新たな発想の糸口をつかんだりできる。企業の事業継続計画(BCP)や地域活性化につながる可能性もある。
当初は働き方改革や地方創生に加え、東京五輪・パラリンピック開催期間中の混雑緩和策として浮上。2019年11月には「ワーケーション自治体協議会(WAJ)」が発足した。参加自治体は当初の65から113(20年9月30日)に増えている。
埼玉県秩父市ではITやホテルなどの地元企業が「ちちぶテレワーク協会」を設立。テレビ会議や勤怠管理システムなどの環境が整ったコワーキングスペースを設け、都内や県内の企業にワーケーションやサテライトオフィスの利用を呼びかける。
21年度予算概算要求では、国土交通省、観光庁、農林水産省、環境省などがそれぞれ特色のある普及促進策を盛り込んだ。政府は「GoTo」キャンペーンに続くポストコロナ政策の目玉にしたい考えのようだが、政策の重複がないようにしたい。
需要は全く未知数だ。五輪対策からコロナ対策に切り替わるなど期待先行の要素が強い。観光地理学が専門の田代雅彦九州産業大学教授は「社員がすぐに出社できる大都市近郊の観光地なら需要はあるかもしれない」と先行きを慎重にみる。
企業は観光地での労働時間や仕事の評価、その間の給与や経費、交通費や宿泊費の配分、期間や場所、滞在先での事故対応など決定が必要な課題は多い。利用者が一部の職種や高所得層にとどまらず、広く働き方改革に寄与できるものにしたい。
(2020/10/9 05:00)
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