社説/国産ドローン開発 官民が連携し、実用化進めよ

(2020/10/14 05:00)

国産ドローンの開発促進が、産業の競争力強化と国の安全保障にとって重要だ。官民が連携し、規制緩和と安全確保を両立させた普及を目指すべきだ。

ドローンは災害時の被害状況の把握や、老朽化した建物や橋などの点検、農作物の生育状況の確認、離島や山間部への荷物の配送など、さまざまな用途が期待されている。政府は「空の産業革命」としてドローンの活用を支援している。

しかしドローンの実用化にはさまざまな課題がある。

ドローンの世界市場で圧倒的な存在が、中国DJIだ。低価格で操作性に優れ、性能も向上しつつある。量産効果でいち早く世界市場を獲得した。

国産ドローンは、1品1品手作りの要素が強く、コスト高になりがち。性能面では飛行時間が30分、可搬重量は数キログラムのものが多く、広範囲の点検や物流用途での利用には制限が多い。

政府は国産ドローン開発支援へ、資金を低利融資する制度を創設した。また新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、委託事業や助成事業を通じて、企業による開発を支援している。国土交通省も過疎地でのドローン物流実用化の導入支援を進めている。

政府が国産ドローン開発を進める背景には、中国製に市場を握られることへの安全保障上の懸念がある。

ドローンは外部通信とつながり、カメラで撮影した画像を、地図情報とともに外部へ送信できる。海外製ドローンを介して原子力発電所や空港などの重要拠点の情報が、外部に提供される可能性も排除できない。サウジアラビアの油田施設がドローンで攻撃された例もあり、武器への転用も容易だ。

中国に立ち遅れた国産ドローン開発だが、日本のセンサーや制御技術などと融合させれば、産業用途での開発はまだまだ広がる余地がある。同時に、人口密集地での利用への規制緩和と安全確保を担保する規制のバランスも重要になる。

官民が連携して多くの課題を乗り越え、実用化への道筋を描いてもらいたい。

(2020/10/14 05:00)

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