(2020/10/16 05:00)
打ち上げ費用低減のメリットを生かすには、これ以上の遅延は望ましくない。
日本の次期主力ロケット「H3ロケット」は当初、2020年度中に試験機初号機を打ち上げる計画だった。しかし開発中のLE―9エンジンに技術的課題が見つかったため、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は打ち上げを1年延期し、21年度中にすることを決めた。
JAXAによれば問題は二つある。第一に、エンジン燃焼室の内壁に小さな裂け目(開口)ができていたこと。第二に、タービンの翼に共振による疲労とみられる破面を確認したこと。いずれも燃焼試験後の点検で判明した。2点とも課題を克服する方法は見えており、改めて試験を実施した上で打ち上げを目指すという。
個々の要素技術の開発は着実に進んできたが、最も重要な新エンジンでつまずいたことは残念だ。関係者によれば、これによって宇宙ステーション補給機「こうのとり」の後継機の打ち上げも遅れることになる。
極限状態で稼働する宇宙機の開発が、予定通りに進まないことは珍しくない。ロケットにとって最も重要なのは信頼性であり、万全の準備を整えるのは当然のことだ。
とはいえ、時間に限りがあることも事実である。世界の宇宙開発は、ビジネス利用を前提とした経済性を抜きに成り立たなくなっている。日本の現在の基幹ロケット「H2Aロケット」は液体水素・液体酸素を燃料とする世界最先端の高効率エンジンを搭載するが、打ち上げコストでは海外勢にかなわない。
「H3」は「H2A」のコスト半減を目指し、日本のモノづくり力をフル活用して開発してきた。実現すれば国際競争で優位に立ち、衛星打ち上げビジネスの展望がひらける。しかし計画が大きく遅れれば、それも画に描いた餅になってしまう。競合する海外勢も低コスト機種の開発を進めているからだ。
ロケットも産業技術のひとつであり、開発は時間との闘いである。遅れを少しでも取り戻すべく、開発の加速を願う。
(2020/10/16 05:00)
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