(2020/10/20 05:00)
小水力発電の導入量が増加している。初期投資の低減や住民参加の仕組みづくりなどをテコに、普及に弾みをつけたい。
ここ数年、国が農業用水などの利用手続きを簡素化した効果もあり、導入件数は毎年右肩上がりで増加。大企業の参入も相次ぐ。2020年3月末の再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)による売電は545件と1年で2割近く増えた。
22年4月から市場価格に連動したフィード・イン・プレミアム(FIP)が始まる。小水力発電も地域の災害対策などに資する一部を除き、基本的には段階的にFIPへ移行するとみられる。このため現行のFITによる安定収入を狙った「駆け込み参入」が続きそうだ。
小水力発電は季節や昼夜を問わず安定的な電力供給が見込める。太陽光や風力に比べ少額投資で事業化でき、周辺環境や生態系への負荷が小さいことも利点。日本は水流をエネルギー利用できる包蔵水力量が世界的にも豊富で伸びしろは大きい。
導入量を増やすには、海外に比べ2―3倍もする水車・発電機器の価格を低減し、売電市場での競争力を高める必要がある。だが現状では発注者がコンサルタント会社などに設計を依頼し、過大な仕様を水車・発電機器メーカーや土木業者などに要求する傾向があり、コスト増を招く要因になっている。
身の丈に合ったコストにするには、発注者はメーカーに設計条件だけ提示し、実績のあるメーカーの豊富な技術力や知見をもっと活用したい。
また小水力発電にふさわしい多様な地域利用を創出したい。補助政策は災害対策に関連するケースが目立つが「小水力発電は水害に弱く災害対策には不向き」との専門家の指摘もある。
資金調達と地域還元を両立できる仕組みづくりも重要だ。岐阜県郡上市の石徹白地区では集落の約100世帯が出資する組合が小水力発電を運営。売電収入が地域の活性化に役立っている。山梨県都留市は市民公募債発行で初期投資の一部をまかなった。住民参加型の運営も小水力発電らしい生き方だろう。
(2020/10/20 05:00)
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