(2020/10/22 05:00)
政府が通信業界に携帯通信料金の引き下げを迫っている。だが大手の値下げが進展すれば、中小事業者のサービスが不利になる懸念も拭えない。政府は多角的な視点で競争環境の整備に取り組む必要がある。
総務省によると、月間データ使用量が20ギガバイト(ギガは10億)の場合のスマートフォン料金は東京が海外の主要都市よりも高額だ。政府はこの調査結果を根拠に通信大手へ値下げを求めてきた。各社は公共の財産である電波を割り当てられて事業を展開している以上、政府の要請は真剣に受け止めねばならない。
KDDIは11月をめどに国際水準を踏まえた料金改定策を打ち出す方針。ソフトバンクも20ギガ近辺の新プランを検討中とされる。ただ、消費者にとっては新プランの登場より、既存プランの料金が引き下がる方が有益かもしれない。従来、スマホ料金体系の複雑さが指摘されてきた。プラン数が多すぎると、分かりにくさは増してしまう。
政府は値下げが進展した場合の中小通信事業者への影響も考慮する必要がある。他社の携帯電話回線を借りて割安な通信サービスを展開してきた仮想移動体通信事業者(MVNO)は、大手との価格差が縮小すれば顧客流出リスクが高まる。KDDI、ソフトバンク、NTTドコモの3社寡占体制が問題視されてきたが、大手の値下げで寡占傾向が強まれば本末転倒だ。
政府はこうした点を踏まえ、料金の引き下げ要請に留めず、市場競争の促進を図るべきだ。通信大手は上場企業として、収益を上げ株主に配当する責務を負っている。もうけ過ぎを指摘する前に、公正競争市場を整備するのが本来の政府の役割だ。
また、日本は第5世代通信(5G)分野の国際競争で出遅れている。基地局では中国・華為技術(ファーウェイ)など海外企業の存在感が大きい。日本国内の5Gインフラ整備も道半ば。性急な値下げで通信大手の体力が奪われ、設備投資や技術開発が妨げられるのは憂慮すべき事態だ。政府も事業者もバランス感を意識した議論やかじ取りが求められる。
(2020/10/22 05:00)
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