(2020/10/26 05:00)
景気が再び失速するかどうかの瀬戸際にある。日本経済の再興へとるべき施策について、国民は与野党による正面からの議論を望んでいる。
臨時国会がきょう召集され、菅義偉首相は初の所信表明演説を行う。菅政権が発足して41日。規制改革の一環として脱ハンコ、デジタル庁創設、携帯電話料金の引き下げなど具体策を提示し実施に着手した。取り組みのスピード感は評価できる。
所信表明では日本をどういう国にしたいのか、首相として進むべき大きな道筋を指し示す必要がある。
まずはコロナ禍で傷んだ経済の立て直し策である。持続化給付金や実質無利子無担保融資、雇用調整助成金などの措置により、企業の倒産は当初危惧したほど急増はしていない。しかし冬期にまた新型コロナウイルス感染が拡大すれば経済の冷え込みは避けられない。第2次補正予算で措置した予備費10兆円の適切な活用策や第3次補正の編成で、コロナ感染対策と経済活動を両立させる新たな対策を講じなければならない。
首相は2050年に温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする目標を打ち出す見込み。世界が脱炭素に向かうなかで適切な方針転換である。ただそれにより国民や産業活動にどのような影響が及ぶのかについても丁寧に説明してもらいたい。
中小企業の生産性を高め、従業員の給与を引き上げるために、企業統合を進めるという考えも、首相が常々温めてきたものだ。技術がありながら後継者不足で廃業する企業も多い。どうすれば中小企業の経営力を増強できるのか。経営者が前向きに取り組める施策が必要だ。
11月には次期米大統領も選出される。日米同盟を基軸としながらも、隣国中国とどう向き合っていくのか。外交政策も重要な局面にある。
野党は日本学術会議の新会員の任命問題で首相に論戦を挑む構え。しかし、今最も重要なのは、コロナ対策と経済の再興策である。コロナ後の成長に資する政策を与野党で真摯(しんし)に議論してもらいたい。
(2020/10/26 05:00)