(2020/10/27 05:00)
大正時代半ば、世界的に大流行したスペイン風邪は文豪たちを恐怖に陥れた。〈見かへるや麓の村は菊日和〉。芥川龍之介は感染がぶり返し、辞世の句を詠んだ。回復後、友人で作家の松岡譲が感染すると、句を添えて励ましの手紙を送った。
心臓の持病を抱えていた菊池寛はマスクを手放さず、うがいや外出自粛を徹底した。「毎日の新聞に出る死亡者数の増減に依(よ)って、自分は一喜一憂した」(短編小説『マスク』)。
菊池寛記念館(高松市)でロビー展『文士とスペイン風邪』が開催されている。ウイルスの存在さえ知らなかった当時、病魔への恐怖は現代とは比較にならなかったろう。日本でも約38万人が命を落とした。
新型コロナウイルス対策も、ワクチンや治療薬が実用化されていない現状では自衛に頼るほかない。やれることは検査や医療の体制を除けば、文豪たちが生きた100年前とあまり変わらない。
コロナ慣れの怖さもある。感染者の増減に以前より関心が薄れていないか。欧州では再びコロナが猛威を振るう。社会経済活動との両立は欠かせないが、気の緩みは禁物。北風とともに勢いを盛り返すのか。そんな綱渡りがいつまで続くかは我々の行動いかんだ。
(2020/10/27 05:00)
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