(2020/10/29 05:00)
未達に終わった「愛知目標」を踏まえ、次期目標作りへ日本企業も積極的に参加すべきだ。
約10年前の2010年10月30日未明、名古屋市で開かれた国連の会議で生物多様性を守る世界目標「愛知目標」が採択された。それ以降、産業界にも生態系の重要さが認知されたが、愛知目標は達成できなかった。次期目標は経営に影響する厳しい内容となる可能性もある。
生物多様性とは種の多様性が保たれた状態をいう。ビジネスと関連しないと思われがちだが、企業は資源調達や水の利用、廃水浄化などで恩恵を受けている。事業活動の基盤とも言える生態系を守ろうと愛知目標が誕生した。自然回復する範囲で生物資源を利用する「持続可能な消費と生産」など20の個別目標もある。20年が期限だ。
10年前、日本が議長国として179カ国を相手に交渉して目標を合意に導いた経緯もあり、企業にも生態系保全の機運が広がった。経団連の19年度の会員アンケートに回答した340社のうち、経営理念や方針に生物多様性保全を盛り込んだ企業は75%。愛知目標採択前の09年度の39%から大幅に上昇した。
だが、世界規模での生物や生息地の減少は止まらず、国連は愛知目標が未達だったと発表した。国連主導の科学者機関も自然の恩恵の多くが減少傾向にあり、企業活動が制約されると指摘している。
愛知目標を引き継ぐ世界目標は21年5月、中国で開催する会議で決まる。その次期目標案には「経済活動とサプライチェーンによる生物多様性への負の影響を50%減」「バイオテクノロジーによる生物多様性や健康への影響を低減」など、企業に具体的行動を求める内容が並ぶ。
海外企業は厳しい目標を支持し、国際交渉に影響を強めている。以前から欧米企業は自社が優位となる評価基準を設定するなど、駆け引きにたけている。開催地・中国も自国産業に有利な目標を求めるだろう。
日本では次期目標への関心は薄い。日本の取り組みが適切に評価されるよう、企業も議論に参加し意見を表明すべきだ。
(2020/10/29 05:00)
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