産業春秋／“モンスター”の衝撃

文字通りのモンスターだ。プロボクシングＷＢＡ（世界ボクシング協会）、ＩＢＦ（国際ボクシング連盟）バンタム級統一王者の井上尚弥選手が米・ラスベガスで開かれたタイトルマッチで７回ＫＯ勝ちを果たした。

ＷＢＡ４度目、ＩＢＦ２度目の防衛の井上選手のプロ戦績はこれで２０戦全勝（１７ＫＯ）。戦いの場はボクシングの聖地。通常ならリングサイドに有名人が居並ぶが新型コロナウイルス感染症の影響で無観客開催に。

初登場の聖地で試合を決めた強烈な右ストレートは世界中を驚かせた。約１年前の試合で負った眼窩（がんか）底骨折の影響を感じさせない圧巻のＫＯ劇。次は４団体統一が視野に入る。

骨折、新型コロナで井上選手の２０２０年はこの１戦のみになったがファイトマネーは１億円。世界的に階級が高いほど人気も高くなるボクシングにあって軽量級のバンタム級（体重５３・５２キログラム以下）でこの額は破格だろう。

ラスベガスは世界最大級の米家電・ＩＴ見本市「ＣＥＳ」の会場になるなど展示会のメッカでもある。チケット収入もない試合で動いた巨大マネー。真の力が備わればいかなる状況も打破できる。井上選手の拳のインパクトは産業界にも参考になりそうだ。