(2020/11/11 05:00)
デフレリスクの払拭(ふっしょく)には、デジタル化と働き方改革の加速が欠かせない。
政府の2020年度経済財政白書は、新型コロナウイルス感染症の影響分析のため例年より数カ月遅れの公表となった。わが国の経済状況を「内外需とも持ち直している」と評価。一方で需要の弱さから物価の下押し圧力が生じ、1年後の物価見通しがマイナスとなるデフレリスクに警鐘を鳴らしている。
景気下落の底打ちは、複数の指標からうかがえる。白書ではコロナ禍による景況感の下落幅はリーマン・ショックより深いものの、東日本大震災後のように急反転したと指摘した。また、前政権の経済政策「アベノミクス」以降に女性と高齢者の就業が大幅に増加するなど雇用者報酬が増大し、これが内需主導の景気拡大を支えたと分析。コロナのもたらした外需の弱さが、日本の景気に波及しにくい構造になったと評価した。
ただ足元では欧州諸国で再び感染拡大防止のための外出禁止などの措置が始まっている。世界経済へのさらなる打撃は免れず、わが国経済が今後、順調に回復するというのは楽観に過ぎる。政府の経済運営は慎重であってもらいたい。
白書では、日本が再びデフレ転落することのないよう、デジタル化による生産性引き上げが重要だと指摘する。また感染症対策として柔軟な働き方の導入が急速に進んだことをいくつかの調査で確認した。テレワークについて、導入していない事業者ほど「できない職種」と回答する傾向があり、増やせる余地があるとした。さらにテレワーク導入企業ほど全要素生産性が向上したとの推計を示した。
コロナ対策が、企業の働き方改革やデジタル化を後押しするのは事実だ。それが生産性向上に結びつけば、日本経済の足腰を強くする。
ただ白書が副題として「日本経済変革のラストチャンス」と訴えたのは、いささか大げさすぎないか。デフレ懸念の台頭に、官も民もデジタル化による変革で対抗しなければならない。その歩みに終わりはない。
(2020/11/11 05:00)
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