(2020/11/23 05:00)
企業は定年延長や成果報酬をバネにシニア層を活性化し、慢性的な人材不足の緩和や技術・技能継承の円滑化を図りたい。
明電舎は4月、業界に先駆け65歳定年制を導入した。シニア人材のスキルや知見を後進育成などに活用できる環境を整えるのが狙いだ。これまで60歳定年後は再雇用制度の下で嘱託社員となり成果報酬は小幅だった。新制度は報酬上限の引き上げで活力を高め、同時に新設した人材派遣子会社を通じて多様で柔軟な働き方を可能にした。
さらに10月から65歳以降も嘱託として勤務できる「エルダー制度」の雇用年限を70歳から75歳に引き上げた。シニア人材が持つ高度な技術・技能の継承などを期待してのことだ。
背景には偏った社員の年齢構成がある。同社に限らず50代のバブル期世代は、その後の就職氷河期世代に比べ人材の層が厚い。制度の定着には時間がかかる。今からバブル期世代がシニアになっても活力を維持できる環境整備を進めておきたい。
厚生労働省の集計(2019年)によると、65歳定年制導入企業は17・2%(前年比1・1ポイント増)にとどまる。新型コロナウイルス感染症による業績不振で、シニア人材活用の取り組みが停滞する懸念もある。
大手企業でも再雇用者は原則、定年時賃金を全員一律に減額する制度を採用しているケースが一般的だ。シニア人材の活用より法改正だからと受け身の姿勢に留まっている。
定年延長や成果報酬の導入には原資が欠かせない。年功序列が残る年代の賃金上昇を徐々に緩やかにしたり、退職給付を充てたりするなど生涯賃金の組み換えが必要になる。コロナ禍で経営が厳しい時だからこそ、労使は長期に雇用を守る視点から協調しやすいのではないか。
年功を廃し、昇進を早めるなど社員の士気が低下しない工夫もカギになる。若手や中堅にとっても安心して長く働ける企業は魅力的なはずだ。21年4月から70歳までの就業機会確保が企業の努力義務になる。シニア人材活性化へ今から布石を打ちたい。
(2020/11/23 05:00)
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