産業春秋/祇園の冬の風物詩

(2020/11/25 05:00)

12月に京都・南座で行われる「吉例顔見世興行」を前に、まねき上げが間もなく行われる。出演する歌舞伎役者の名前を書いた板をとび職人が竹矢来に取り付ける、冬の風物詩だ。

今年は新型コロナウイルス感染拡大もあり、南座のある祇園地区は普段のにぎやかさに欠けた。春は芸舞妓(まいこ)が舞を披露する「都をどり」が中止。夏の祇園祭は縮小で山鉾巡行が中止。秋は芸舞妓が日頃の研さんを披露する温習会も中止となった。

顔見世興行は開催にこぎ着けたが、例年と様子が異なる。通常なら11月30日から12月26日までと1カ月程度続くが、今年は2週間と半分に短縮。座席数も減らして人と人の距離を確保するため、定員は半分にするという。

まねきに使う書体は勘亭流(かんていりゅう)という。歌舞伎独特の書体だ。丸みを帯びて、看板からはみ出さんばかりに看板をいっぱいに使う。一文字ずつ太く丸く、すき間がないように書くのは、「劇場がお客で大入りになるように」との願いが込められている。

「文字は密だが、座席は密ではない」という言葉が京都の人たちの間で何度交わされたことか。来年こそは、座席も文字通り勘亭流となることを願わずにはいられない。

(2020/11/25 05:00)

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