(2020/11/27 05:00)
技術的には実現可能でも、経済合理性を伴わなければ広く社会に普及しない。国には脱炭素社会につながる革新的な技術の開発支援はもとより、早期の普及につながる政策を期待する。
温室効果ガス排出の実質ゼロを目指す動きが世界的に広がるなか、削減の具体的手法にも関心が集まっている。二酸化炭素(CO2)を化学品や液体燃料などの炭素資源として再利用する「カーボンリサイクル」は有望な選択肢である。コークスの一部を水素に置きかえ、高炉からのCO2を抑制する次世代の製鉄技術開発も進む。
CO2と水素からメタンを合成する「メタネーション」と呼ばれる分野では、天然ガス生産時に生じるCO2を都市ガスの原料として再利用するプロジェクトが2030年の商用化を目指して進展する。
いずれのプロジェクトにも共通するのは、これまでの実証事業を通じ、すでにCO2削減効果が検証され、商用化への道筋が描かれつつある点だ。
一方で、乗り越えるべき障壁もみえてきた。最大の課題は「カーボンニュートラル」のカギを握る水素の安定調達体制やその価格。水素は今後幅広い産業分野での利用が見込まれるだけに、社会共通のエネルギー基盤として整備されることが、実用化の前提となる。メタネーションは既存のガスパイプラインを利用して供給できる利点があるが、環境に配慮し再生可能エネルギー由来の水素を用いると、原料価格は跳ね上がる。
政府は、CO2削減の切り札となる革新的技術として5分野16課題を掲げ、50年に向け基礎研究から実証、実用化まで後押しする戦略を打ち出す。とりわけ重要なのはコスト目標である。
水素に関しては、欧州や中国が導入目標を掲げて開発加速を促すなど、世界で競争が激化している。日本には普及を阻む産業構造や規制といった制度上の問題、国際標準化戦略など、民間だけでは解決が困難な諸課題が山積する。国が主導して克服に取り組み、早期の商用化につなげる好循環を描きたい。
(2020/11/27 05:00)
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