(2020/12/1 05:00)
安全保障上の要請と過度な財政負担の防止を両立するには、これまで以上に武器の省人化・自動化が必要だ。
海上自衛隊の新型護衛艦「くまの」が進水した。同艦は、これまでの同クラス艦が約200人の乗員を必要としたのに対し、半分以下の90人で運用可能な多用途タイプの最新鋭艦。乗員の勤務でも交代クルー制を検討するなど、多くの新しい可能性を秘める。
日本周辺の安全保障環境は厳しさが増している。中国は経済力を背景に軍事力増強を加速している。2020年版防衛白書によると、中国の海上兵力隻数はわが国が計140隻なのに対し750隻、航空兵力では同380機に対して3020機に及ぶ。また北朝鮮のミサイル攻撃能力についても、同白書は「重大かつ差し迫った脅威」と最大限の警戒を隠さない。
わが国の同盟国である米国の軍事力は依然として他を圧倒するが、安全保障のすべてを米国まかせにはできない。米国に次いで緊密な関係にある豪州との安全保障上の連携を強化し、日本として一定の責任を果たしていかなければならない。
その場合、問題は単に武器の量だけではない。最新兵器を扱う人員が必要となる。ミサイル防衛の手段であるイージス・システムの陸上配備も取りやめとなり、イージス艦を増強する方向。しかし、その高度なシステムを艦上で運用する人員が足りなければ、安全保障戦略も画に描いた餅だ。
現状の自衛隊の人員充足率は8割前後。防衛予算を増やしても人員を確保できるとは限らない。また日本の財政の実情からみても、防衛予算の増額には限界がある。
水上無人機や遠隔操縦の機関銃などの技術を取り入れた新型護衛艦は、この難問に対する答えのひとつである。「くまの」は22年3月に海自に引き渡し予定。計6隻の同型艦建造が決まっており、旧型艦を置き換える。人員不足を補う省人化の需要は、ますます高まる。防衛省と民間企業が一体となっての研究開発が欠かせない。
(2020/12/1 05:00)
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