(2020/12/21 05:00)
科学技術政策の意思決定にビッグデータ(大量データ)分析を活用する取り組みが始まった。「エビデンス(証拠)に基づく政策立案」を体現するものとして注目したい。
内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)は、科学技術政策を支援する新システム「e―CSTI(イーシスティー)」の運用を始めた。
国立の大学・研究開発法人の予算や研究者約14万5000人の属性や論文、研究資金の獲得状況などの各種データをつなげたデータ共有プラットフォームとなる。これらを分析ツールを用いて解析し、研究力、教育力、資金獲得力などをデータで評価する。
各種ビッグデータの収集や、人工知能(AI)など分析の技術が急進展。信頼に足る根拠を入手できる環境が整ってきたことが背景にある。
例えば研究費の種類と論文の質・量の状況は、2021年度からの第6期科学技術・イノベーション基本計画の議論の材料となっている。元は各大学のミクロデータだが、ビッグデータとすることで、他大学との比較から個々の大学の経営戦略を検討したり、研究者の評価にも活用できるものとなった。
各省庁の政策立案には以前からデータや根拠が求められていたが、使えるツールは表計算ソフトなど限られていた。立案の担当者に都合の悪いデータは省かれる、ということもあった。信頼性が不確かなデータは、政策決定を支えるものにならない。多大な国費をかけながら、必ずしも問題点を改善できていない従来の政策に対する社会のいらだちも、ここに重なった。
e―CSTIは一般にも公開されており、関係予算や大学ごとの外部資金や寄付金、地域における大学の役割などが、データとして見える化されている。
分析の前提や切り口に対する反論も含め、多様な人がデータを目にして議論できるプラットフォームでなくてはならない。立場の違う人も活用することで国民の多くが納得できる、実効力のある政策立案が実現することを期待したい。
(2020/12/21 05:00)