(2020/12/28 05:00)
大災害時に東海道新幹線のバイパスとなる高速鉄道の整備に暗雲が垂れ込めてきた。北陸新幹線の敦賀(福井県)延伸が1年以上遅れるからだ。JR東海のリニア中央新幹線も静岡県での工事停滞に加え、都市部での大深度地下工事に不安の声が出ている。国は国土の長期展望の元、これらの進捗(しんちょく)をしっかりと管理する責務がある。
北陸新幹線の事業主体、鉄道建設・運輸施設整備支援機構(機構)の管理体制や情報共有の不備が原因で、金沢―敦賀間の工期が当初予定の2023年春から1年以上遅れ、工事費も2600億円増額する見込み。
国土交通省は22日、機構に業務改善命令を出し理事長と副理事長を事実上更迭、25日には就任5カ月の水嶋智官房長を1月6日付で副理事長に充てる異例の人事を決めた。公募する理事長以上に重要な役割だ。省内に機構の「監理・監督室」も設置した。
赤羽一嘉国土交通相は「それだけ重く見ている。二度と同じ事を起こさないよう、決着をつける」と覚悟を示す。
国交省は11月、延伸工事は1年半遅れ事業費は2880億円増額が必要と明らかにした。これに地元や与党プロジェクトチームが猛反発し、有識者による検証委員会が再検討した結果、遅延期間も額も圧縮された。
機構は、国鉄民営化時に適切な資産処理対応ができず社会問題化した国鉄清算事業団が母体。令和の今、国鉄時代を彷彿(ほうふつ)させるずさんな対応をしていた。
国は北陸新幹線の大阪延伸を2046年と目算、関西財界などが10年以上前倒しを求めている。東京―大阪間を日本海側で結ぶ新幹線は震災時のリスクヘッジに加え、東海道新幹線を運営しリニア事業も進めるJR東海1社に大動脈を依存せず、適切な競争を促す点でも重要だ。
そのためにも、機構を早期に抜本的に立て直さなければならない。リニアも東京都調布市での大深度地下の高速道路工事に伴う陥没事故で、都市部の工事が不安視されるなど、新たな課題が出ている。国交省の判断力、指導力が試される。
(2020/12/28 05:00)
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