(2021/1/1 05:00)
新型コロナウイルスが短期間で世界を覆い、時代の風景をガラリと変えた。世界は各国の深い相互依存により、複雑で困難なリスクにいや応なく引きずり込まれる。しかし、我々はコロナ後の時代に向け、経済メカニズムを「緑」の経済成長に大転換し、持続可能な繁栄の扉を本格的に開ける時にきている。
感染症のパンデミック(世界的大流行)は現代社会システムの課題を浮き彫りにする。社会的格差の是正や国際的な協調の回復、グローバルヘルスへの対応など、目的・行動をより一層共有する社会構築へ大きく踏み出す必要がある。大転換へのカギは「グリーン化」と「デジタル化」だ。
地球環境の破壊や生物多様性の減少が新たな感染症の原因の一つと指摘される。熱帯雨林などの大自然の破壊は野生の動植物が持っていたウイルスを自然宿主から解き放ち、人類に新たな脅威を突きつけている。
それら踏まえ、世界各国ではグリーン成長戦略として巨額投資が予定されている。わが国でも新しい経済成長戦略として2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」に挑戦する。
特に蓄電池を活用した電力グリーン化や水素社会の実現、二酸化炭素(CO2)の回収・再利用などに全力で取り組む。洋上風力発電は40年までに3000万キロ―4500万キロワットまで発電容量を大幅拡大する。関連産業も含め新成長戦略の柱の一つに育てていく必要がある。
コロナ後の世界はデジタル化が急加速する。人工知能(AI)、ビッグデータ、IoTなどを介して個人や社会のあらゆるデータが収集・分析される。上手に活用すれば利便をもたらすが、特定の企業や国家が独占し恣意的に用いる危険性も内包する。情報の非対称性を不断にチェックする仕組みが不可欠だ。
グリーン化の成長戦略は現代に生きる人々のライフスタイルの転換である。今回のパンデミックを機に世界はより復元力(レジリエンス)が高く、より寛容な社会構築へと大胆にシフトすることが求められている。
(2021/1/1 05:00)