社説/防衛依存強まる航空機産業 技術の蓄積を民需にも生かせ

(2021/1/12 05:00)

防衛需要をこなすだけの産業に、いつまでもとどまっていてはならない。

昨年末に閣議決定した政府予算案の中で、防衛関係費は前年度当初比1・1%増の5兆3422億円(デジタル庁振り替え分含む)と過去最大規模となった。予算増は9年連続だ。

宇宙・サイバー関連の新領域や、兵器を遠距離で誘導制御する「スタンド・オフ防衛能力」の獲得を目指した研究開発などに新規の経費が必要なのは当然だろう。だが防衛費増の最大要因は高価な最新兵器の調達だ。その代表が航空機である。

防衛省は2019年度にE2D早期警戒機9機、20年度にKC―46A空中給油機4機を米国から有償援助(FMS)で一括調達した。実態は完成機輸入である。FMSは防衛費の1割を超すまでにふくれあがり、与党の一部から国内産業への配慮を求める声が上がった。

21年度はFMS予算を半分程度に抑える一方、新たに次期戦闘機の開発費として576億円、関連研究に155億円を計上した。次期戦闘機は現在のF2戦闘機の後継。米国機をベースに開発したF2の開発費は4000億円程度だったが、次期戦闘機はエンジンを含めた国内開発となる。防衛省幹部は「F2を上回ることになる」と説明する。実際の製造コストを加えれば数兆円に達すると見込まれる巨大なビジネスだ。

また防衛省は当初、完成機輸入を予定していたF35A戦闘機を国内組み立てに転換。さらに最新鋭のC2輸送機をベースに電子情報収集機も装備することにした。いずれも国内メーカーは技術の蓄積と能力向上、それに安定した仕事量を確保できることになる。

新型コロナウイルスの流行により世界の航空需要は低迷している。航空機産業も逆風にさらされており、三菱重工業は小型旅客機「三菱スペースジェット」の開発を事実上凍結した。

当面、業界全体が防衛依存を強めるのは仕方ないだろう。そこで技術力に磨きをかけ、民間航空機分野での将来の飛躍を目指してもらいたい。

(2021/1/12 05:00)

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