社説/森林の果たす役割 国産材活用で温暖化対策に貢献

(2021/2/12 05:00)

日本は2050年の達成を目指す「カーボンニュートラル(CN)」で森林大国である特性をもっと生かすべきだ。森林の計画的な管理、国産材の利用促進、関連産業の育成を強化してほしい。

CNでは森林の樹木の成長が吸収分にカウントされる。日本の国土に占める森林の割合は68・5%でフィンランドに次ぐ世界第2位。人工林の割合が約40%と他の森林国より高い。日本はパリ協定での2030年の温室効果ガス削減目標26%(13年度比)のうち2%を森林吸収分で確保する方針だ。

ただし森林を放置すると樹木が老化し温室効果ガスの吸収力が落ちる。人工林の半数は樹齢50年を超え、本来なら伐採・植林を進め、豊かな森林の維持を図らなければならない。そのためにも国産材の利用が必要だ。しかし現在の国内の年間木材需要約7500万立方メートルのうち国産材は3分の1。長年、輸入材との価格競争に勝てなかった。

国産材活用で特に期待したいのは大型建造物だ。近年は直交集成板(CLT)の活用技術が進み、木造ビルの建築も可能になった。日本でも実用例が徐々に増え、自社ビルをCLTで建てる企業も出てきた。ただ街全体を木造建築で構成する欧州などの取り組みに比べると、まだ国全体の動きは小さく見える。

流れを変える試みがある。森林環境譲与税として、森林の間伐や林業従事者の確保・育成、国産材使用促進・啓発などへの補助が19年に始まった。財源として国民1人当たり年1000円の森林環境税が24年から住民税に上乗せして徴収される。同税は使途が不明確など、懸念の声も上がる。目的や成果を公表し、国民の理解と納得を得る努力が欠かせない。

日本には豊かな森林があり、木造建築の長い歴史と知の蓄積に加え、世界有数の木工機械産業もある。国産材を軸に循環型社会と産業の融和を描き、世界に新たな価値を発信しよう。省エネルギーや再生可能エネルギーの動きに負けぬよう、森林管理と国産材活用に向け、関係者の取り組みに期待したい。

(2021/2/12 05:00)

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