(2021/2/25 05:00)
トヨタ自動車の“未来都市”実験がスタートする。23日、静岡県裾野市で「ウーブン・シティ」の建設に着手した。スマートシティー計画は世界で進むが、一企業がゼロから挑戦するのは異例だ。官主導ではできない大胆な実験を行い、画期的な成果を期待したい。
実験都市は長年、旗艦車の「センチュリー」を生産し、2020年末に閉鎖した東富士工場の約70万平方メートルの跡地に造られる。地上に自動運転車の専用道と歩行者専用道、さらに歩行者と1人乗り自動車が共存する3本の道を張り巡らせ、地下には物流用の道を造る。当初は高齢者と子育て世代、発明家ら約360人が、将来は社員ら2000人以上が住む。ゴールを決めない持続的な取り組みだ。
ウーブン・シティの狙いは、自動運転や人工知能などの最新技術を駆使したモビリティーの未来とそれを中心とした新しい都市を築くことだ。米グーグルやアップルなどの巨大IT企業が電動車市場を虎視眈々(たんたん)と狙っている。米国では無人運転タクシーも始まりつつあり、将来のモビリティーの世界は、自動運転が主役になるとみられている。
トヨタはハイブリッド技術を中心に世界の自動車産業で主導的地位にあるが、これからの競争は自動車の域を超える。このためにNTTなど300を超える異業種の企業が参画し、モビリティーだけでなく健康やエネルギー、環境などさまざまな社会課題を、IoT(モノのインターネット)でつなぎ、解決する新しいコミュニティーの構築に挑む。
重要なのは課題を正確に判断し、スピード感を持って対応することだ。国は2019年に「スマートシティ官民連携プラットフォーム」を立ち上げ産官学500以上の組織が連携、各地で取り組みが進む。ただ既存の都市での実験にはさまざまな制約があり時間もかかる。
ゼロから構築するトヨタのスマートシティーは、格段に自由度が高い。官はできる限り規制を取り除き、欧米や中国の強力な都市開発と対抗出来る挑戦をバックアップすべきだ。
(2021/2/25 05:00)
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