(2021/3/1 05:00)
大規模災害時の早期復旧にはボランティアによる「共助」が欠かせない。頻発・激甚化する自然災害に備え、支援制度の拡充で参加を促したい。
高齢化や過疎化が進み、大規模災害では地域力の低下や行政による「公助」の限界が指摘される。ボランティアは重要性を増しているが、個人の善意と負担に頼っているが現状だ。厚生労働省の2020年調査によると特別休暇制度がある企業(約59%)のうちボランティア休暇導入率は4・6%にすぎない。
兵庫県は19年度に全国の自治体に先駆け、ボランティア支援制度を設けた。県民が県内外で発生した大規模災害で活動したり、県外の人が兵庫県での災害時に活動を行ったりする際に、交通費、宿泊費、がれき撤去などの活動費を5人以上の団体・グループに最大20万円補助する。
長野県も20年度から同様の制度を始めた。19年の台風19号で千曲川水系が氾濫し、流域の自治体で洪水被害が発生。7万人を超すボランティアが活躍した。県の担当者は「困った時はお互いさま」という共助の精神に根ざしている点を強調する。
自治体の財源は災害ボランティア支援を目的としたふるさと納税に頼っている。これをいかに増やすかが課題だ。兵庫県は企業の納税額が約3割(19年度)で個人への依存度が高い。発生の切迫性が高まる南海トラフ地震を想定すると産業界の一層の協力が要る。
一方で従業員が災害ボランティアへの参加に「後ろめたさ」を感じる職場では制度の利用は進まない。被災地での活動状況を社内に紹介するなどの方法で支援に協力的な組織風土を醸成したい。社外へも積極的に情報発信すれば、社会貢献度の高い企業として就活生や取引先から好感を持たれるだろう。
全国社会福祉協議会によると、ボランティアの登録者数(災害支援他含む)は、東日本大震災が発生した11年の867万人をピークに減少傾向にある。背景にはボランティアの高齢化がある。他の自治体でも支援制度の整備を急いでほしい。
(2021/3/1 05:00)
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