(2021/3/4 05:00)
サーキュラーエコノミー(CE、循環経済)を、環境対策から経営課題に引き上げよう。
2日、世界経済フォーラム(WEF)が循環経済をテーマとした国際会合を開いた。ボルゲ・ブレンデWEF総裁は「循環経済は大きな経済価値を生み出す」と発言した。他にもイノベーションや起業、パラダイムシフトが語られ、新しい経済システムを議論する場だった。
CEは、資源や材料を生産し利用した後に廃棄する一方的なものから、修理して再利用したりリサイクルすることで循環させ有効活用するという考え。
欧州連合(EU)は早期にCE政策を打ち出し、環境問題に留まっていた資源の有効利用を、社会変革を誘発する成長戦略と位置づけた。EU加盟国に立地する企業は、政策に基づいた経営を先行させている。
ライフサイクル工学が専門の東京大学の梅田靖教授は「EUの政策に完全に合わせる必要はない」と指摘しつつ、「流れに乗ってビジネスチャンスとすることもできる」と助言する。
CEの発想はまずは製品の長寿命化が優先され、保守・修理が求められる。シェアリング(共同所有)も含まれる。故障の監視や貸し出しの手配にデジタル技術を活用でき、新産業を創出できる。そして製品利用が困難になった時点で、素材としてリサイクルを検討する。
さらにEUのCE政策には、資源をできるだけ長く欧州にとどめる狙いがある。資源は取引のたびに資金がやりとりされ、保守や修理、シェアリングのたびに課金もあるので、同じ資源が何度も利益を生む。
日本は廃プラスチックを年100万トン以上輸出していた。再生材の加工や流通に伴う経済価値は海外にもたらされ、日本の恩恵は目減りしていた。
CEを分別回収やリサイクル程度と考え、「以前から取り組んでいる」と語る日本企業の関係者は多い。だが、思考停止では新事業は生まれない。CEは「モノからコト」へと転換を促す大きな経済価値構造の変化でもある。経営の課題と位置づけ、対応を加速させるべきだ。
(2021/3/4 05:00)
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