(2021/3/10 05:00)
復興から新産業の創出拠点へ。コロナ禍で首都圏集中リスクが高まる状況だからこそ、被災地の産業育成策を考えたい。
東日本大震災の地震や津波で大きな被害を受けた岩手、宮城、福島の3県。復興事業によるインフラ整備は着実に進み、東北の製造品出荷額は震災前の水準までおおむね回復した。
ただ、地域や業種ごとに回復度合いはさまざま。経済産業省のグループ補助金を受けた企業への調査によると、震災前2010年と20年の売上高の比較で、製造業は20%増加、建設業は69・6%増加する一方、水産・食品加工業は10%減少、旅館・ホテル業も14・7%減とばらつきが生じている。内陸部の製造業の回復は早く、沿岸部の水産加工業や宿泊業は遅れが目立つ。新型コロナウイルス感染症がそれに追い打ちをかけた。
サンマの水揚げで本州1位を誇る岩手県大船渡市。サンマ、サケは不漁で、ブリやサバが増えているという。海水温の変化で沿岸を回遊する魚種が変わったことや周辺国による漁獲量の拡大が要因とされる。沿岸部の基幹産業である水産加工業にとって大きな課題だ。大船渡市は養殖に活路を求める。
宮城県気仙沼市で将来の担い手を育成する産業人材育成事業が進んでいる。大山健太郎アイリスオーヤマ社長(現会長)を塾長に、多くの企業が参画する経営未来塾を開塾。これまでに100人以上が経営者候補として巣立った。
東北の人口減少、若者の首都圏流出は依然として続いている。労働者人口と産業振興は表裏一体であり、地域が主体となって、将来の担い手を育成する取り組みは重要だ。
政府は9日、新たな復興の基本方針を決定した。復興庁は10年延長し、21年度から第2期復興・創生期間に入る。
被災地が支援から自立へと移行するには、インフラ整備などのハード面から、新産業の創出と人材育成といったソフト面の強化が欠かせない。コロナ禍で首都圏への過度な集積リスクも顕在化した。この機運を地域創生と復興に役立てたい。
(2021/3/10 05:00)
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