(2021/3/12 05:00)
百聞は一見にしかずとは必ずしも肉眼だけではない。空の高みから機械の目で地表を見下ろすことも、真実に迫る一助となる。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、東日本大震災10年となるのを機に、宇宙から見た復興状況の研究成果を発表した。電磁波などを使い、人工衛星のセンサーから地球輪を遠隔探査する。可視光だけでなく、合成開口レーダーでマイクロ波も検知。波長ごとの分光特性を調べ、地表の姿を描き出す。
かつての水田が震災後に草地や裸地(未利用)になり、それが徐々に復活していく様子が興味深い。福島第一原子力発電所の周辺では、ソーラーパネルが広い面積を占め、三陸のリアス海岸では新しい市街地が高台に形成されるなどの特色も。
単一の衛星の観測成果ではないことも知っておきたい。震災前を記録した『だいち』は退役。今は『だいち2号』から後継衛星への橋渡しの時期だ。米・欧のデータも組み合わせて復興の歩みを追ったという。
軍事利用が注目されがちな衛星写真だが、防災計画や農業の広域監視など、利用方法はいろいろ考えられるのだそうだ。願わくば次の10年で、被災地の新たな発展が宇宙から確認できますように。
(2021/3/12 05:00)